「日本漢文文献目録データベース」について

1.趣 旨

二松学舎大学は、平成16年度21世紀COEプログラムとして「日本漢文学研究の世界的拠点の構築」が採択されました。これは現代における漢文学の衰微と、その結果として招来されうる日本文化そのものへの過てる認識の醸成、特に日本文化の特異な側面である漢文訓読という顕著な文化事象の忘却に対して、それに歯止めをかけるのみならず、一つの文化の総体として、詩文は言うに及ばず、歴史・哲学・宗教・芸術・医学・数学・天文学など、およそ漢文によって書写記述された文献全てを対象とする、オールラウンドな学問体系として漢文学を再認識するという、私どもの構想への評価であったかと思われます。

その意味で私どもがまず注目すべき文献としては、広い意味では漢字漢文文献の全てがその対象となるでありましょう。ただ中国や朝鮮あるいはベトナム等において漢文によって著作された文献は、私どもが銘打ちます「日本漢文学」関係文献としては、厳密な意味では該当しません。したがってそうした文献は、直接私どもの収集調査の対象とする資料から外すこととなります。その結果一部では重複する部分をもちながら、日本漢文を対象とするという意味で、全国漢籍データベースとは棲み分けが可能となったのであります。

ただ、一部の機関における漢籍については、全国漢籍データベースに入力されて いないものに限って、これを補充する意味で本データベースに入力している場合があ ります。従ってある程度の漢籍を検索することも可能となっています。

一部の重複する部分というのは、和刻本漢籍のことですが、これは一般に漢籍目録を編纂する場合必ず記載対象として意識されるもので、地方文庫などの漢籍構成からいえば、ほとんど和刻本ばかりという場合もありうる文献であります。ただこれには邦人による訓点や欄外注記・全面傍訓の付加、さらには邦人による序跋凡例の付加という、いわゆる唐本にはありえない和刻本ならではの特徴があります。これらの特徴は私どもの日本漢文学においてはとうてい無視しえないものであり、全国漢籍データベースとの重複を厭わず対象資料として認識した所以であります。そのほかに所謂準漢籍というものがあります。漢籍本文に邦人の手が加わり、原本とはことなる本文に変形したもののことですが、これはあくまで原典を漢籍とするもので、分類の体系からみても漢籍系列に配置する方が分かりやすいものと考えています。これは、和刻本漢籍以上に邦人の手が入っているという意味で、日本漢文により近い存在であるといえましょう。

以上のことから、私どもが直接の研究・収集の対象とする文献としては、純粋の日本漢文文献はもとより、和刻本漢籍・準漢籍をも取り込み、さらにその内容としては、文学・思想のみならず宗教系・自然科学系の文献をも対象とする、極めて多様なものとなったのであります。

2.企 画

こうした事情をふまえながら、私どもはこれら膨大な資料を対象としつつ多様な研究体制を構築し、それぞれが必要に応じたデータベースを企画しつつあります。

現在構築中の企画および今後の計画に関する企画には以下のようなものがあります。

これらの企画を、現時点では「日本漢文文献目録データベース」の名のもとに一括して作成、あるいは作成準備中でありますが、さらに新たな企画も加わる予定があり、いずれは各データを分離することになりましょう。

なお、これらの企画は緒についたばかりのものが多く、たとえばメイン企画はもとより論文目録データのように、現在なお多数の資料が検索にヒットしない場合があることも否めません。いましばらくは他の目録データと併用していただければ万全でありましょう。

メイン企画であります「日本漢文学関連古典籍書誌所在データ」は、多様な各種の企画を超えて、最も基本的な日本漢文学関連文献の原典についての綜合データを編纂して、情報発信することが私ども課された責務であるとの認識にたって、構築を目指すこととなった企画であります。ただ各地の収蔵書を全て実地調査してデータを蓄積する余裕がなく、各地各機関の収蔵目録を収集してそこから関連記載を転記する方法を採用しました。そのため当初は全国の図書館・大学・研究所等へ、関連資料の収蔵の有無についてアンケート調査を実施し、それをもとに年度により地方を区切って調査を行い、それぞれの地域における目録の収集を行いました。その結果逐次記載項目の増加が見込まれ、今後も一定量の資料蓄積ができるごとに公開していくことを予定しています。ただ各目録における記載方法の相違や、転記の際の誤記等に関する記載精度の向上については、今後継続して訂正を入れることとなりましょう。したがって本データベースによる文献検索結果については、さしあたり収蔵機関に確認をとられることをお勧めいたします。

以上、まだ不十分なものではありますが、このたび平成18年3月をもって、本学ホームページ上での公開はもちろんのこと、国立情報学研究所のご理解を得て、同研究所のリポジトリからも一般にむけて公開しております。また京都大学人文科学研究所による「全国漢籍データベース」における漢籍検索も、同研究所担当者各位のご理解を賜り、同時にできるようにしてあります。

現在2月末において集積した資料数は、約43000点となります。この数字は今後入力作業が継続されるかぎり、不断に増加することとなりましょう。さらに国内のみならず海外の日本漢文学関連資料をも取り込んで、より充実した内容とすることを計画しています。我が国また諸外国の関連研究者や図書館職員等の皆様から、今後も継続的な情報紹介や研究協力をいただけるよう期待しております。

(拠点リーダー 高山 節也)

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